酒のキモは、糀。
宮下農園は、酒は造れないけど、糀は造っています。
味噌のための糀と、お客様の注文の糀です。
ご注文の糀は、無農薬のおコメをお預かりして、糀だ毛を出してお届けするものです。
おコメは、無化学肥料・無農薬・除草剤なし・殺虫剤のネオニコチノイドを使わない、自然栽培米から造ります。
おコメを洗う時に、水はお米の温度と同じか低いものを使います。
水温が高いと、お米の表面がふやけてしまい、美味しくできません。
そうはいっても、1月2月の寒い時期なので、どっちも手が切れる冷たさです。
水に一晩漬けて、蒸す前に日立の全自動(洗濯)脱水機は、一定の乾燥度で停まりますので、すぐれものです。
蒸しの甑(こしき)にお湯が煮えたぎると、ジェット機が通過するときの音がします。
「ゴー」釜鳴りです。
それがするようになったら、お米を入れて、蒸気が吹いているところに、継ぎ足します。
蒸気が出ないようになったら、しばらく待って再び吹いてくると、そこに入れます。
「吹き注ぎ」という技法です。
熱い蒸気が米に当たると、外硬内軟の蒸し米ができますが、コメの表面が湿っていると、水に蒸気が当たり、温度の低いお湯になってしまうので、表面が煮えて外硬内軟になりません。
いっぱいに蒸して頃合いを見て、取り出す前に火を強くして、圧を掛けてコメの外を乾燥させて、蒸しを終えますと、「外パリパリ中しとしと」の蒸し米を得られます。
外硬内軟といいますが、麹菌は乾燥している側から湿った側に進行しますので、内部に菌を入れるために、そのような蒸し上げが必要になります。
細かい話ですが、総ハゼにするために、麹室の中の湿度も調整して、最後の仕上げ時に、部屋を乾燥させると、更に麹菌が中に入ります。
「総破精」の糀は、見た目普通のお米のように仕上がります。
突きハゼ(突き破精)とは、精白した大吟醸用のお米は、脱水できないので表面が湿った蒸し上げになり、糀菌が中央に向かわず、表面をループしたように周って、出来上がる仕様です。
お酒によって、突きハゼの味が独特の醸しになるので、これも技です。
一般の方々がお作りに成るものや、スーパーマーケットなどで売られている糀は、もふもふの毛が生えている美味しそうな糀ですが、これは外クチャクチャ芯のある炊き方のコメによるので、中に菌が回っていないと思われ、いわば失敗作です。
糀を出すこと、麹師さんというお方がおられて、匠の世界なのです。